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安部典子「時の紙棚」

前田誠一

レビュー、芸術新潮2011年5月号

ニューヨークを拠点に活動する安部(あんべ)典子(1967年生まれ)の国内では8年ぶりの個展。薄い紙をずらしながら一枚一枚切り抜き、何十枚、何百枚と重ねて行く。修行僧めいた手作業の集積から、自然の造形を思わせる美を現前させる。

レリーフ状の小品が並んだ前回に比べ、今展は紙をぶ厚く重ねて立体彫刻と化した作品や、敬愛するロバートフランクの写真集を切り抜いたもの、鉄製キャビネットを用いたインスタレーションなど、作品の幅もスケールもめざましく進化を遂げた。

壁面から突き出た幅3メートル超の大作では、微妙なうねりの連なりが尾根をなし谷を削り、その波動はやがて空間に溶け出して、ギャラリー全体に響き渡るかのようだった。

[3.25−5.7 SCAI THE BATHHOUSE]

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