キルーArtist Books プロジェクトについて、2019-2011年
安部典子
「芸術の神に捧ぐ」
大それた言葉である。しかし、もしこのプロジェクトをまとめ、何がその巻頭言にふさわしいかとなれば、これしか浮かばない。それくらいなことをやってしまったのである。なにせ、他のアーティストらの作品(カタログ等)の上に、カッティングを加え/そぎ落としを繰り返し、作品を解体し、そして私の解釈というフィルターを通して変形させてしまったのだから。
それは、それらのカタログ本を使ってファンシーなオブジェやコラージュ作品を作って私を表現するのでもなければ、こっそりとだまし絵的に私を忍ばせるのでもなく、又、マテリアルとして彫刻していくということでもない。
ではまず、なぜ、誰に向けて何を目的にその作業をやるべきなのか、それを自分の中に定める必要があった。そして行き着いたのは、上記の一文である。
今回キュレターとして関わって頂いたグレンファーマン氏からの提案により、このプロジェクトはスタートした。氏と共に本屋をはしごして入手した35冊の候補の中から、個展用に最終の24点を自身で選んだ。
制作のプロセスは、大まかに3段階に別れる。
まずそのアーティストへの深い尊敬を念頭に掲げ、彼らが芸術を通して何を表現したのかを検証する。 それを咀嚼し、表現するべきテーマ(タイトル)を決める。 自身をフィルターに例え、それに徹し、1ページ毎対話をするようにカッティングを施しながら、作品化させていく。
裏から切って行くものは、次にどのようなイメージが出てくるのか解らない。その都度切り落とすのか、残すかを判断しながら制作をしていく中で、本を破壊するギリギリのところまで追求し、テーマに沿って再構築させる。最終的にフィルターとしての自分自身がそこにしっかりと留まり、またアーティストのエッセンスがより強調されていること。その2つのバランスが取れて始めてコラボレーションとなり、それぞれが新たな”作品”へと昇華されて行くことを試みたのである。
作品リスト
彼の心、彼の人生:アンディ・ウォーホール
収集された美:デミアン・ハースト
アートの犠牲者達:デミアン・ハースト
プロローグ:杉本博司+フォイヤー
彫刻:リチャード・セラ
スピリチュアル・アメリカ:リチャード・プリンス
クラッシュ!:村上隆
キル:エゴン・シーレ
スタジオにて:アルベルト・ジャコメッティ
流れーWar Cut:ゲルハルト・リヒター
流れープライベート・アトラス:ゲルハルト・リヒター
バスタブの中で?!:ジェフ・クーンズ
ダイアモンド・ダスト・シューズ:アンディ・ウォーホール
警告!:リチャード・ペッティボーン
セイリング トゥ...:サイ・トーンブリー
愛の解剖図:ジョン・カリン
トム・フリードマンに聞く:トム・フリードマン
トム・フリードマンを考える:トム・フリードマン
美しさよ、僕の頭の中で永遠に:デミアン・ハースト
ドットにドット&レイヤーズ:ロイ・リヒテンシュタイン
パーフェクト・ラバーズへ:フェリックス・ゴンザレス・トレス
ロバート・ソレインへの考察:ロバート・ソレイン
ダブル・サイド:ギルバート&ジョージ
アーティストよ、自分を信じろ。:ペトロ・ヨランスキー
2011年:日本 ”TIME LAG”展より
韻−Phoneme−: 李禹煥
Into the World Processor : インゴ・ギュンター
Rain : 宮島達男
Today −河原温への考察− : 河原温
On-Off Kawara : カンジタ・ホファー、河原温
The Sand−The Americans−: ロバート・フランク
世の中 : 赤瀬川源平