ジェシカ・ロジン
「安部典子展-Linear-Actions Cutting Project, “Lands of Emptiness" ピエロギ、ブルックリン」
レヴュー、Art on Paper ウェブサイト、2003年2月号
ジェシカ・ロジン
展覧会レビュー、Art on Paper ウェブサイト、2003年2月号
洞穴のようでありながら繊細な、安部典子の本や、大小にわたる紙のブロックなどの彫刻作品は、彼女のドラマティックかつ魅力的な切り込みから生まれており、素材の特質を強烈なまでに押し広げている。それぞれの作品における紙の層は、彼女の切抜きの角度の違いによって段階的に露出しており、華奢な洞窟壁や硬い岩盤の層と共鳴している。
展示の中でもっとも印象深いものは、大型の彫刻シリーズ「Lands of Emptiness: Linear-Actions Cutting Project 2 からの展開」であり、複雑な、うずまく細波を安部が彫った、1200枚の紙から成る3つのブロックである。その形には、緊張と豊かさが同居している - 急なうねりが角の辺りで渦巻き、急カーブを曲がると水溜りの中に入り込んで平らにされ、又なめらかで穏やかな表面は、時として鋭い崖の様な落下によって分断されている。これらの形のドラマは、そのブロック全体の外観から見ると、さらに強調される - コントラストと緊張感が、この作品を力強くさせている。
この効果は大作の一つにおいて強く出ている。そこでは構造物のてっぺんに位置している小さい穴を、身をかがめて覗き込まないと安部の切り込みが見えなくなっており、その中では大小の波が、勾配の急な細いトンネルへと続いている。数インチ以上を見ることが不可能であり、その為鑑賞者は、その彫刻の表面の真下に、どんな形が隠されているのか、思いを巡らすことを与儀なくされる。もっとも作品の持つこの側面はフラストレーションの溜まるものではあるが、この安部の熟練された職人芸は、彼女の作品に深遠さを与えている -- 鑑賞者の視点に戻れば、このパレットの厚い壁の向こうに、どんなカーブやうねりを見つけることができるのだろう、と長時間思いを巡らすことが出来るのだ。
展示にて大作に付随している4つの本の作品、「百科事典 - 日本地理1」(2001)と、「解剖学書」(2001)は、似たような切込みではあるが、それらの表面には既に地図と文字が書かれている為、安部はそのパターンに対抗して、カッティングを施している。デザインを明らかにする為フラットに広げられた構図とその重量感は、大作への賛辞となるが、大型パレットのスケール感には欠けている為、鑑賞者にめまいを起こさせるような、ねじれた曲がりくねった大作への欲求を起こさせる。
それにも関わらず、その地理の構造の本を付け加えたことは、展覧会に一貫性を持たせ、また大作への関連性としての役割を担っている。相互に、それらはそのシンプリシティと深みにおいて、注目すべき重要な展示を形作っている。